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ミシシッピがくれたもの

 

ミシシッピがくれたもの (創元ブックランド)

ミシシッピがくれたもの (創元ブックランド)

 

 父が連れて行ってくれた故郷の街で、祖母から聞いたのは1861年、南北戦争の年に起こった出来事だった。若者をかりたてる戦争の刺激、息子をとられるのではという母の恐怖。そんな中に船から降りて街にやってきた、贅沢で美しい少女と、謎めいた黒人の血を引く少女の二人組み。二人を下宿させ、翻弄されつつも、少しずつ変わっていく家族。無策な戦争の犠牲者や、川に現れるという幽霊の言い伝え、そしてついに明かされる少女たちの思いもかけない真実。歴史の中で苦しみながらも生きていく一人ひとりの姿がとても魅力的。当時の黒人差別や歪んだ社会への理解も頭で、ではなく胸に迫って感じることができる。