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タマゾン川

 

タマゾン川   多摩川でいのちを考える

タマゾン川 多摩川でいのちを考える

 

子どものこら多摩川で遊び、生き物が大好きで大学でも釣りに夢中になり、釣りの会社に入社するも、釣りをする暇もない忙しさに、1年で辞めて生物の環境調査の仕事を手探りで始めた著者。美しかった多摩川が高度成長期に汚水の流れる川に変わり、その後下水処理場の建設でやっときれいな川になるが、こんでゃ外来魚が急増する。飼いきれなくなったペットを捨てる人が多く、東南アジアやアマゾンの魚までうようよあふれる。「これではタマゾン川だ」とふと発言したことが広まり注目を集めるようになる。だが、著者は外来魚を駆除するのではなく、なんとか活かそうとする「おさかなポスト」の活動を始める。里親をさがすが転売されたり、駆除でないため補助金が下りなかったり、試行錯誤をしながら進めるようすはとても興味深い。そして3.11。ここで、停電により下水処理場が止まり、そのままの排水が流れたら一挙に汚染水で魚が大量死するという危険があることが語られる。こうした想像もしていないことを知ることができ、そのために私たちが節電や節水で貢献できるこいう建設的な提案がなされる。多摩川の複雑な問題を誠実に解き明かしてくれている本。