児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

あかいえのぐ

 

あかいえのぐ

あかいえのぐ

 

サラとサイモンのおとうさんは、売れない画家です。貧しい暮らしですが、おかあさんともう1人赤ちゃんと5人の家族は仲が良く幸せでした。サラとサイモンはよくおつかいに出かけました。いろんなお店に行くのは楽しいことでしたが、画材屋のおじさんだけは意地の悪いところがあって嫌いでした。一方、大好きなのは古本屋さん。2人は本を並べるのを手伝ったり、サラがサイモンに本を読んで聞かせたりして過ごします。古本屋のおじさんはとてもいいご主人で、おとうさんの絵が売れるようにお店に飾ってくれました。でも絵はなかなか売れません。うちにある大切なものを売りながらお金を工面してきましたが、とうとうおとうさんの新しい傑作があと少しで完成というときに、仕上げの赤い絵の具1本すら買うこともできなくなってしまったのです。画材屋さんは「金がないなら絵の具はやらん」とにべもありません。一家は暗い気持ちでその夜を過ごし、サラとサイモンはもうおしまいだと思いました。ところが翌朝早く、大きな荷物が届いて開けてみると、中から出てきたのはラム肉、卵、パン、キャベツに・・・1本の赤い絵の具でした。実は、おとうさんには若い頃に決別してしまった金持ちのおじさんがいました。そしてそのおじさんは古本屋さんの顔なじみで、サラとサイモンがおとうさんを思いやり困っている様子を密かに見ていたのです。それからは、おじさんの助けで一家の暮らし向きは良くなり、おとうさんの絵も売れて豊かな暮らしができるようになりました。
本文の挿絵は黒・緑・茶のみでシンプルですが、家族それぞれの思いやおとうさんの描く絵へのイメージが鮮やかに浮かび上がり、さすがアーディゾーニです。   (ふ)