児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

本おじさんのまちかど図書館

 

インド出身でカナダ在住の著者によるインドを舞台にした物語。ヤズミンは本が大好きな9歳の女の子。路上で本を貸してくれる本おじさんから毎日本を借りるのが楽しみでたまらない。しかもおじさんは、いつもぴったりの本を勧めてくれる。ある日、勧められた本は薄いので「もっと厚い本がいい」と文句を言ってしまったが、読んでみたら、つかまってしまった鳩が最後は自由になるインドの昔話で、とても面白くて何度も読み返してしまった。ところが、本おじさんは、無断で営業しているというので、突然店の撤去を命じられる。でも、おじさんは無料で貸しているから営業なんかじゃない! なんとかおじさんを助けたい。おじさんに会いに行く中で、おじさんは元は学校の先生で、字が読めない人に文字を教えたり、住所がないホームレスの人にだって本を貸してあげていたことがわかる。みんなおじさんが大好きで、なんとかしたいと思っている。おりしも町は選挙戦の真っ最中。あの昔話のハトは、たくさんのハトが集まることで、網を持ち上げて自由になった。私たちも力を合わせればいい。自分が投票したい候補者に、おじさんのことを訴える葉書を出そうとヤズミンは思いつく。おじさんの問題を「選挙のなかみ」にするのだ。親友リーニとの小さなけんか、いじわるな叔父の訪問、街の中のひとたちとの交流。現市長の不正疑惑、さまざまな問題が無理なく融合して活気にあふれるインドの街と、そこで暮らすがんばりやのヤズミンの暮らしが浮かび上がってくるようでとても魅力的。インドを身近に感じられる物語だと思う。