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わたしがいどんだ戦い1940年

 

 生まれつき足が曲がり歩けないために閉じ込められて成長したエイダが、第二次世界大戦時のイギリスで、弟の手を借りて家から抜け出し疎開児童に紛れ込んだことで、心が温かいスーザンの家に引き取られて希望を持ち始めた前作「わたしがいどんだ戦い 1939年」の続編。エイダは足の手術を成功させ、普通に近く歩けるようになる。エイダを閉じ込めていた母が空襲で亡くなったことで、スーザンが正式な後見人となる。弟のジェイミーは、スーザンをママと呼びはじめるが、エイダはこのままうまくいくとは信じられずに不安でたまらない。空襲で家を失ったスーザンはソールトン家から家を借りるが、お屋敷を接収されたソールトン夫人が間もなく同居することになる。常に上から指示するようなソールトン夫人は苦手なエイダだが、逃れようがない。さらにスーザンに勉強を見てもらうために、ドイツから来たユダヤ人の少女ルースがやってくる。ドイツ人だと特にソールトン夫人は警戒するが、ルースはヒトラーに追い出されたのだという。ソールトン夫人の息子でエイダを励ましてくれていたジョナサンの戦死により、夫人はすっかり元気を失った。戦争の激化の中で、自分の足で歩き始めるエイダ。長らく閉じ込められていたために、常識さえ知らずに混乱しながらも、だからこそ一つ一つを確かめるようにして知識とし、先入観にとらわれずに判断するエイダの姿がとても魅力的。今の幸運を失うのではないかという不安。みんなが知っていることを知らない(お葬式さえ何のことかわからない!)混乱。無知の為に間違えるのではないかというあせりなど、たたみかけるような事件の連続に、ついつい一気に読み進んでしまう本。