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裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち

 

 彼氏や家族からDVを受け、居場所がない中でキャバ嬢や援助交際をしながら生き延びる沖縄の少女たちへのインタビュー。10代で、場合によっては中学生で妊娠や出産に追い込まれ、子育てをしながら働く。著者は、どのようにすれば彼女たちを助けられる社会になるのか? を考え、できるだけ同じ視点に立ちたいと願う立場でインタビューを行っている。16歳でできちゃった婚をした後、離婚するが養育権を奪われキャバ嬢をする優歌は、またDV男につかまり妊娠するもなんとか別れて一人で子育てに入る。ある意味、これが幸せな子の事例であることが恐ろしい。翼と美羽もキャバ嬢だが、翼は美羽の助けでDV男から逃れることができる。翼が殴られたときに駆け付けた美羽が「大丈夫」などとは言わず、自分もDVメイクをして翼を笑わせる場面がある。本当に相手の立場に立つことのできる美羽はすごい。鈴乃はDV男との間に子どもができ、妊娠中を殴られ、早産となって障がいがある子どもが生まれるが、その子をきちんとケアして守り、ついに男のもとから出てキャバ嬢をしながら高卒資格、看護師資格をとって自立していく。この彼女の背後に、彼女の妊娠出産のときに、励まし続けた看護師たちの姿がある。亜矢はレイプ被害にもあい、その後もいろいろな男と付き合って妊娠し、著者が中絶につきそう。京香も15歳で妊娠出産、キャバ嬢で育てるが堀師のルイと出会って幸いにも家庭を築いた。春菜も恋人を自分が体を売った金で養い続け、やっとのことで別れるも売春の過去との折り合いに苦しんでいる。彼女たちの様子を見ていると、沖縄の出生率が高いのがわかる気がする。望まない妊娠でも、子どもを懸命に支えて育てる女性たち。また、暴力の連鎖。中学早々で不良化し、行き場を失う少女たちをどうすれば守る社会ができるのだろう。少なくともそれは、簡単に自己責任だと切り捨てる社会ではないと思う。