児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

パンに書かれた言葉

 

イタリア人のママと日本人のパパを持つ私の名前は光・S・エレオノーラ。Sは、ある言葉の略。3.11の震災の後、本当は中学2年に上がる前のこの春休みに家族でイタリア旅行にいくはずだったのが、一人でイタリアに向かうことになった。津波放射能の心配をしてくれるイタリアのノンナ(おばあちゃん)や親戚たち。そんな中、ノンナから、17歳で亡くなったノンナのお兄さんパオロの話を初めてきく。イタリアは第二次世界大戦で、当初ファシズム政権がドイツ・日本と組んでたたかったが、途中でファシスト党を倒した。だが、そのためドイツ占領下でドイツに味方するファシスト残党と、抵抗するパルチザンが闘った。ノンナが住む北イタリアではユダヤ人が狩りだされ、そんなドイツの動きをやめさせようとしてパオロもパルチザンに加わって処刑されたのだ。日本に帰国した光は、こんどは父方の広島のおじいちゃんの所に行く。北イタリアと広島、それぞれの戦争の恐ろしさを知る中で、光はパオロがパンに書き残したSperanza(希望),それが自分のミドルネームであることを考える。日本ではあまり知られていない、イタリアのパルチザンを、主人公の母がイタリア人という設定の中でうまく描いている。簡単に解決できない問題だが、私たちも子どもたちとともに考えたい。