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ザ・ディスプレイスト 難民作家18人の自分と家族の物語

 

トランプ大統領就任と、それに伴う移民排斥の中で編集されたという本。難民として転々とした経験の辛さだけではなく、祖国では楽しい経験もあったのに、悲劇の話だけを期待される辛さ。難民だからこそ、微罪(電車のキセル)さえ決してしなかった父の姿。やっと新しい国籍を手に入れた安堵と、喪失の悲しさ。時により、優れていることや努力を期待され、同時に格下であることを求められるジレンマなどが語られる。根底にあるのは、「難民」として特別に扱わなくていいから、ふつうに安全に暮らすことを認めて欲しいという思い。経済難民が排斥される辛さ。面白かったのは「トランプの壁は、つくられる前からおいしい食べものに負けていた」アリエル・ドルフマン。さまざまな国をルーツにする食べ物にあふれるアメリカに、おいしい食べ物の魅力と難民を重ねる視点は説得力があった。日本も、各国の食べ物があふれるように、いろいろな国の人たちを、素直に受け入れられると良いと思う。