児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

オンネリとアンネリのおうち

 

なかよしのオンネリとアンネリは、ある日、薔薇横丁の薔薇乃木夫人から1軒のうちをゆずってもらいます。そのおうちには、バラ模様のソファや2人にぴったりの洋服、花模様の食器、2羽のインコや3階建ての人形の家などなど、小さな女の子に必要なものは何もかもそろっていました。

交番のやさしいリキネンさんや、おとなりのノッポティーナさんとプクティーナさん姉妹と知り合ったり、反対どなりに住むウメおばさんはちょっと苦手だったけれど、どろぼう事件をきっかけにうちとけたり。最後は、2人の家族やクラスメイトもみんな招いてオンネリちゃんの誕生日パーティーを開きます。
アンネリの話し口調で語られる夢のような世界。9人きょうだいで母親の気がまわらない家庭のオンネリと、両親が別々に暮らしていてやはり自分の居場所がないアンネリの境遇は、大人には少しひやっとする描写もありますが、子どもは気にせず楽しむと思います。 (は) 

忍者図鑑

 

忍者図鑑

忍者図鑑

  • 作者:黒井 宏光
  • 発売日: 2000/06/01
  • メディア: 単行本
 

甲賀流に弟子入りし忍者集団「黒党」(くろんど)として活動する著者による読みもの図鑑。「ぼくが忍者になったわけ」から始まり、忍者とは、忍者の知恵と忍術、歴史上の忍者たちと、忍者文化を広く知ってもらいたいという熱意で語りかけてくる。

たとえば、「忍者」といえば思い浮かべる顔の前で両手を組むポーズは「絶対に大丈夫!」と暗示をかけるパワーアップ術だとか、天候や動植物の自然をよむサバイバルの知恵など、心身の修行を積めばその存在に近づけるかもしれないという魅力。ほとんど記録のない陰の存在ながら、戦国時代には大活躍したことをリアルに感じるおもしろさ。ゆるめなイラストも、武器はしっかり描きこんであって満足感がある。現代の生活にも忍者の運動能力や知恵は生かせるし、生かしてほしいという願いが伝わる。(は)

なるほど忍者大図鑑

 

なるほど忍者大図鑑

なるほど忍者大図鑑

  • 発売日: 2009/06/01
  • メディア: 大型本
 

最近うちの文庫に入会した3歳の男の子は好きなものがいろいろあって、その1つが「忍者!」。きっかけが、動画配信サービスで見た5,6年前の戦隊ヒーローとのことで今時です。そこで本書を蔵書に加えてみました。忍者の武器や道具、忍術、ふだんの生活を楽しいイラストで解説。密書に使うあぶり出しや、秘薬の包み方は実際に試したくなります。さらに武器や道具の実物写真には大人も興味津々。幅広くすすめられます。 (P)

かわうそオスカーのすべりだい

 

かわうそオスカーのすべりだい

かわうそオスカーのすべりだい

 

すべり台で遊んでいたかわうそのオスカーは、ビーバーが家を作るために倒していた木にぶつかり、はらをたてます。もっと高い山の上にすべり台を作ろうとすると、父さんは川から離れすぎると危険だと心配します。なのに言うことを聞かずに山の上からのすべり台を作ったオスカー、ところがそのオスカーをキツネが狙います。そしてそのきつねをオオカミがねらい、オオカミをピューマがねらっていました。ヘラジカまでやってきてさぁたいへんです。ドミノのように、一気に事件が進むラストは、気軽に楽しめます。 

少年探偵事件ノート

 

少年探偵事件ノート (フォア文庫)

少年探偵事件ノート (フォア文庫)

 

 成績は悪いけど妙にカンがいいタケシ。彼はふとしたことから強盗事件の犯人のナンバーを警察に知らせて「名探偵」のあだ名をちょうだいする。それからというもの、ちょっとした依頼が舞い込むようになった、万引きの汚名を晴らしてほしい、消えた作文の行方を知らせてほしいなどいずれもささやかな事件だが、タケシは、事件と向かい合うことで少しづづ成長する。タケシがちょっとまじめすぎ、事件の解決が都合よすぎるところが物語として弱いが、気軽に読める。

ぼくのまつり縫い 手芸男子とカワイイ後輩

 

ぼくのまつり縫い 手芸男子とカワイイ後輩 (偕成社ノベルフリーク)

ぼくのまつり縫い 手芸男子とカワイイ後輩 (偕成社ノベルフリーク)

  • 作者:神戸遥真
  • 発売日: 2020/09/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 中学2年になった優人。堂々と、というほどではないにしても手芸が好きなことを隠さず被服部でも後輩を迎える立場になった。だが入部してきた新一年生小倉姫香は、とてもかわいいのにひどくそっけなく、とりわけ優人を見る目が冷たい。いったいなぜ? 相変わらず不器用な糸井さん、3年生で部長になったけどちょっと緊張気味のサンカク先輩。部の雰囲気もなんだか落ち着かない。恒例の演劇部の衣装づくりも、直前の主役の事故による交代もあって混乱とトラブル続き。どうなるの? という展開。小倉がカリカリしていた理由とその解決が、ちょっとこじつけ気味の気もするけど、だれもが、ただ好きだという気持ちで素直にやっていこうよ、という姿勢は気持ちよい。とはいえ結局部員1名しか入らず4名の被服部。なんだか今後の存続を心配しちゃいます。

人形つかいマリオのお話

 

人形つかいマリオのお話 (児童書)

人形つかいマリオのお話 (児童書)

 

 人形つかいのマリオは、各地をまわりながら人形劇をしていましたが、お客が入らず苦労していました。ところが『王子さまと貧しい農家の娘』の演目が大当たり! マリオはその演目ばかり上演して金持ちになりますが、人形への扱いはぞんざいになっていきました。ある夜、人形たちは、マリオはすっかり変わってしまった。昔みたいにもっと他の役がやりたい! と大騒ぎ。最後まで王さま役の人形だけは抵抗しますが、他の人形はあやつりひもを切って、勝手に動き始めます。帰ってきたマリオは最初は怒ったりびっくりしたりしますが、人形たちと話し、もう一度昔のようにみんなで一緒に人形劇をやろうと改心するという話。もともと劇場の舞台用に書いたというが、確かに、これは舞台で見たらとても映えると思う。劇中劇のように、まず『王子さまと貧しい農家の娘』の物語を演じ、反転して人形のパート、最後に新しい物語を華やかに演じる舞台が浮かんでくる。とはいえ劇のメリハリのために物語がわかりやすくなりすぎているように感じてしまった。やはり舞台で見てみたい。