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トトの勇気

 

トトの勇気 (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)

トトの勇気 (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)

 

 トトは勉強ができない。ものを作るのは大好きだけど、落ち着いて字を書いたり、計算したりは無理だ。お父さんもお母さんも、そんなトトにはらをたてけんかばかりしている。義務教育でも2度も落第し、受け入れてくれる学校を探すのに苦労している。学力が優秀だがものづくりも得意のおじいちゃんだけがトトをはげましてくれるが、2度目の退学で、そのおじいちゃんからも「できなくても,あきらめてはいけない」としかられてしまう。そのトトが初めて興味を持ったのは技術高校。ものづくりのようすがとても楽しそうだったから。だが、学力レベルが低く、入学を認められる見込みが低い。おじいちゃんにはげまされ、トトは願書を書く「ぼくは35キロ。でも35キロ分の希望があります」という懸命な手紙で、受験のチャンスを手にする。そんなときおじいちゃんが倒れる。心の中のおじいちゃんにはげまされ、なんとか投げ出さずにテストを受け、入学を認められる。次第に学校にもなじむが、なかなか回復しないおじいちゃんのことを思うと心が沈む。けれど、ついに退院したおじいちゃんが学校に来てくれ、満足な終わりとなる。どうしても勉強になじめないトトを辛抱強く励ますおじいちゃんの存在がいい。同時に、どこかで自分がやらなくてはいけない、ということに、ついにトトが立ち向かわせている。このバランスって難しいかも。