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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

わたしはイザベル

 

わたしはイザベル (STAMP BOOKS)

わたしはイザベル (STAMP BOOKS)

 

 母親のストレスをぶつけられながら生きているイサベルは、なぜそうなるのかもわからないまま、自信を失っておびえている。聖人のようないい子になることで母親の怒りを免れようとし、なにをすれば正解なのかと緊張しながら人生を送っている。子ども時代から、成長し、母親を無くして思いがけずに解放感で幸せになりつつ、そんな自分に自己嫌悪する。独立して生きられれば良い、と願ったはずなのに、気づけば下宿した大家の娘代わりに彼女の機嫌をとって生きている自分に気付いて絶望する。文学を軽やかに語り合う大学生グループに魅せられ、吸い寄せられるように近づきながらも、やはり彼らの一員になれない苦しさ。最後、ふと生まれ育った町を再訪して、親の悪意のせいで苦しんでいたが、自分は悪くなかったのだ、と気付き、言葉の世界で生きていきたいと願う。自伝的な作品とのこと。「正しいふるまい」がわからない、というイサベルの苦悩に、共感する子は多そう。