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父さんの犬サウンダー

 

少年の家族は、両親と幼い妹弟が3人。そして優秀な猟犬サウンダーは、獲物を追いつめたとき大きく響きわたる声をもっていた。

父親の日雇い仕事や、母親が屋敷から請け負う洗濯仕事で、食いつなぐ生活。ある日父親が、思い余って肉を盗み、白人たちに連行されてしまう。そのうえ、主人を守ろうとして傷を負ったサウンダーも姿を消す。

父親とサウンダーの行方を捜し続ける少年を、あきらめさせようとする母親。やがて、傷を癒して戻ってきたサウンダーは、声を出さなくなっていた。

それから何年もたち、強制労働が明けて帰ってきた父の姿に、再び力強い声をあげるサウンダー。まもなく父親が亡くなると、サウンダーもあとを追うように死んだ。

差別され虐げられても耐え、なんでもないように見せる母親の姿は、あきらめの境地を示す。が、少年が信じ行動し続けたとおり、父親とサウンダーは生きて帰り、家族の元で死ねたこと、少年が自分の境遇を物語れる相手(老人)に出会い、学校に通えるようになったことが、希望の光。

「名もないアフリカ系アメリカ人たちに、いくらでもおこった話」と、訳者あとがきにあります。 (は)

(原書:ハーパー社)