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はだしのゲン 第6巻

 

終戦から3年。庶民は貧しく飢えていた。ゲンの母親は、原爆症で起き上がれない状態が続く。子どもたちは食糧を手に入れようとするが、ヤミ物資は警察が厳しく取り締まっている。ゲンは、地道にレンガや鉄くずを集めて買い取ってもらい、わずかな糧を得る。

ある日隆太は、金の集まるところから奪ってやろうと、銃を持って賭場荒らしを実行。手に入れた大金で、ゲンの母親は治療を受けられることになるが、しかし今度は、隆太がヤクザに命を狙われる立場。警察に出頭して、感化院に身を隠すことにする。

一方、仕送りをするからと九州の炭鉱へ行った長兄浩二は、戦争に狂わされた人生に嫌気がさし、飲んだくれていた。
ゲンは、夏江と再会。夏江は、顔のケロイドのせいで人並に扱われず、生きる希望を失っていた。でもゲンは、本当に恨む相手は戦争を起こしたやつ、原爆をおとしたやつだ、そいつらに思い知らせてやるまで生き抜け、と言う。そんな折、手を失った少女が足と口で洋服をぬっているところを目にした夏江。勇気を得て、洋裁店をもつ夢を抱くようになる。
持てる者と持たざる者。生きるための盗みや殺し。いがみ合いや差別。理屈でわりきれない、それぞれの思いが吐露される中で、ゲンには、生きること、生きてこそだ、という筋が1本通っています。 (は)