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いのちをはぐくむ農と食 岩波ジュニア新書

 

いのちをはぐくむ農と食 (岩波ジュニア新書)

いのちをはぐくむ農と食 (岩波ジュニア新書)

  • 作者:小泉 武夫
  • 発売日: 2008/07/11
  • メディア: 新書
 

冒頭で2006年のデータとして医師国家試験を受けて医師になった人が全国で約6,300人。それに対し農業新規就業者5,000人という数字が示されていて、あらためて日本の農業の未来が大変なことになっていることを実感した。先進国の中でも食料自給率を低下させ続けている日本。それでいて廃棄食料が多いという現状に対し、具体的にどうすればよいかという実践を重ねている内容で興味深かった。今後、食料の自給率低下が続けば、食料輸出国だった中国が輸入国に転じたように、輸入が途絶えたり低下したとたん日本の食卓が大変なことになるのは自明の理。それに対抗するキイワードは地産地消。地元で安心・安全な食品を作り、それを適正な価格で販売できるように加工したり直売所・レストランを作る試みを続けている。農家の経営が安定すれば後継者は出てくる。また、地元の食材を使い、伝統を説明したり、生産に参加することで給食の食べ残しが減った事例も面白い。食べることは生きることの原点。生産者にならない子も、自分が安心して食べ続けられるものを作ってくれる生産者を応援できる消費者になって欲しい。