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平和ってなんだろう 「軍隊をすてた国」コスタリカから考える (岩波ジュニア新書)

 

平和国家であることをウリにして、外交努力を続け、軍隊放棄と非戦を保っているコスタリカ。実際にどんなことをしているのか? なぜそんなことができたのか? と実際にコスタリカでも暮らしてみた著者によるノン・フィクション。内戦が耐えない中米の中で、貧しくて外国からの援助も必要、そんな中で、とても軍備にお金をかけられないという現実がまずある。戦争の危機はなかったわけではないが、内戦をしたら生きていけない、という国民の総意が内戦や戦争を抑え込み、どこにも(東西どちらにも)属さずに、アメリカ的な理想を前面に出す(公平な選挙による決定)ことで近くのアメリカの戦争に巻き込まれるのを巧みに避けていくのは立派。ただ、最後にあったが、男性中心的な価値観の社会の中での男女平等の問題などは、ホントこれからの課題でしょう。“民主主義”といいつつ女性や奴隷の参政権がなかった古代アテネみたいに、実は・・・という点があってほしくはありません。ちなみに2009年の出版。荒れる現代社会の中で、その後どうなっているのか心配です。