児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

新版 原発を考える50話 岩波ジュニア新書

 

新版 原発を考える50話 (岩波ジュニア新書)

新版 原発を考える50話 (岩波ジュニア新書)

  • 作者:西尾 漠
  • 発売日: 2006/02/21
  • メディア: 新書
 

著者は『反原発新聞』編集、原子力資料情報室の共同代表。旧版は1996年に出版。その10年後、3.11前に出版された本だが、3.11の福島原発の事故やその後の対応ミスを予見する内容であることに驚いた。『3.11後を生きるきみたちへ』の中で、著者は原子力発電所が爆発しているのに屋内に留まれという指示が出たことに怒っていたが、この本で見るとそもそも日本の防災対策が“そもそも事故は起こらない、だから対策は屋内退避で十分”というマニュアルしかなかったことがわかる。混乱した緊急時に、屋内に留まれという指示が出されたのは、ひょっとしてこのせい!? 原発の根本的な問題、放射能廃棄物が処理できないトイレのないマンション状態であることを改めて確認させられる。コントロールできない放射能という怪物に夢を描き、撤退できなくなっていった戦後の原子力政策の流れが、未だに続いているのが恐ろしくなる。最後に、「わたしたちのできること」として誰かにまかせるのえはなく、小さなことでも(例えば待機電力を減らす努力でも)していこうという提言は、中高生読者にも自分が何ができるかのきっかけを与えるものだと思った。