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5アンペア生活をやってみた 岩波ジュニア新書

 

5アンペア生活をやってみた (岩波ジュニア新書)
 

 3.11の東日本大震災の時に朝日新聞郡山支部福島県で勤務していた著者は、直後白河市の大規模地滑り現場に取材で向かいます。10棟が埋まり13人が生埋めという悲惨な現場。ところが、全体の被害のすさまじさに原稿は掲載されませんでした。そして徐々に明らかになる原発事故による放射能被害。まもなく東京支部に転勤になった著者は、しだいに節電が忘れられていく中で、電気を極力使わずに生活できないかと考え始めます。通常の家庭なら40アンペアのところ5アンペアで暮らすことを決めますが、それでは炊飯器もエアコンも電子レンジも使えません。大丈夫か? と不安になりながら、手さぐりで電力を多く使う家電は何か? 代わりに使えるものはないか? と試行錯誤を重ねていきます。まわりから過剰に褒められたり、逆に手ひどく批判されたりしながらも、自分がゲーム感覚で楽しく節電することを大切にする感覚がとてもすてきです。特別な変わり者ではなく、誰もが自分のできる範囲で、生活を見直すことで、自分の生き方を自分で決めていくことができるのだ、とを教えてくれる本です。