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王様でたどるイギリス史 (岩波ジュニア新書)

 

王様でたどるイギリス史 (岩波ジュニア新書)

王様でたどるイギリス史 (岩波ジュニア新書)

  • 作者:池上 俊一
  • 発売日: 2017/02/22
  • メディア: 新書
 

ローマ人が撤退した後のイギリスの七王国時代から現代まで、王様がどう変わったかをたどりながらイギリス史を紹介する本。ヨーロッパの国々とはちょっと異なる道を選びつつ、王様はヨーロッパと関係あり(フランス系だったり、ドイツ系だったり)という摩訶不思議なイギリスのようすを要領よく紹介している。ちょっと驚いたのはマクベスは、実際のスコットランド王(それも、そんなに悪くない)だったことを始めて知りシェイクスピアって歴史作家なのだと改めて思いました。アーサー王伝説からの騎士好き文化。外国から来た王ゆえの土地のジェントリーの台頭による議会政治の発展。フランス王などのように王権神授説を築けなかったために、イギリス国教に向かう。ロビン・フット伝説を王も好むことで、庶民との距離を近づけることを成功させるなど、なるほどと納得する点が多かった。しかし、仕事を卑しいとさげすみつつ、下層階級は働くことを奨励する階級社会や、支配した国を分断統治するやり方。屈服させれば親切になるが、それまでは苛烈という指向性など良識を持ちつつ大きな矛盾を抱えている英国の姿が良く分かった。長年にわたり、国民と一定の距離を置きつつ、親しまれるという離れ業をしてきた現在のイギリス王室。窮屈な日本の皇室よりは自由そうです。