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野生のロボット

 

野生のロボット (世界傑作童話シリーズ)

野生のロボット (世界傑作童話シリーズ)

 

 船の難破で、輸送中のロボットの箱が無人島にたどり着いた。次々と壊れる中、一個だけが無事に陸に打ち上げられる。箱をのぞいたラッコが偶然スイッチを入れたことでロボットのロズは動き出す。自己保存のプログラムにより、動物を観察し、動物をまねるようになった。あまりに異質な存在として、動物たちはロズを避けるが、自分のせいで巣から落ちたガンのヒナを育てはじめたことから、動物たちもロズが危害を加えないことを理解して交流が始まる。とりわけガンのヒナのキラリは、ロズを「ママ」と呼んで慕ってくれた。だが、平和が破られる日が来た。難破したロボットを回収しようと戦闘ロボットがやってきたのだ! 「ロボット」とあるが、寓話的な物語なのでSF的なものが好きな子よりも、ふつうに物語が好きな子に好まれそう。ただ、SF志向が強い子にとっては、ロボットのプログラムや動物のふるまいが情緒的過ぎるように感じるかもしれない(例えば私のような!)。作者は6年もかけてこの作品に取り組んだとのことだが、主人公はなぜロボットでなければならなかったのだろう? SFのルールや規則性にこだわらないタイプの読者には十分楽しめると思う。