児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ズボンがはきたかったのに

 

 当時18歳の高校生によるデビュー作。シチリアの田舎町、誰もがお互いを知っていて、ちょっと夜に外にいただけで過剰な噂をたてられるような生活の中で、16歳のわたしは、ズボンがはきたいから修道女になりたいと言って笑われる。男の子のマネにもチャレンジするけど、両足の間にあるものは自分にはないとガッカリ。ズボンをはくのは淫売だといわれたから淫売にチャレンジしようとしてみるも、胸はガリガリ、貧乏な家では服だって買えない。ちょっとしたことでベルトで殴りつける父さん。道で男の子とキスしていたところを見つかって、母さんを絶望させ家を追い出されるまでに追い込まれる! ちょっと浮世離れした主人公の感性と、潔癖を装いながら裏では自分の娘に手を出しているおぞましい叔父がいる閉塞感のある田舎の雰囲気がよく描かれている。最後の解決はなんだか安易な気がしたが、前半の主人公が、なんとか自分を見つけようとする試行錯誤は確かに魅力的だった。