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知里幸恵物語

 

文字文化のないアイヌ語を後世に伝えるべく『アイヌ神謡集』をまとめるも、出版前に19歳で病のため亡くなった知里幸恵の人生。幸恵は、母方の祖母からアイヌ語の昔話(ウウェケペレ)や謡物語(ユカラ)をたくさん聞いて育った。学校の成績は優秀な幸恵だったが、明治政府による同化政策差別意識に、辛い思いや苦労を重ねた。言語・国語学者金田一京助との幸運な出会いに導かれ、冒頭の功績となった。幸恵の遺志はその後、2人の弟や伯母、母に受け継がれた。アイヌ文化の自然観、宗教観、日本政府の侵害や差別(「旧土人」という呼び方)の歴史もよくわかる。巻末の知里幸恵年表に、アイヌ関連の法律の変遷あり。 (は)