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いのちの木のあるところ

 

現在世界遺産に登録されているデイヴリーの大モスクと治癒院。小さな地方の街で、こんなにみごとな建設ができたのはなぜか、建設を命じた王マフマドシャーと王妃トゥラーンについてもほとんど詳細はわかっていない。だが、実はこんなことがあったのかも、と作られた物語。トゥラーンは、姉たちのような美貌はないが、物語が大好きで、自由な心をもつ3番目の王女。政略結婚を強いられるのが嫌だったが、姉の結婚式で出会ったアフマドショーと不思議な縁が重なり結ばれる。民を大切にする王は、王宮よりも、みんなが集うモスクを建設しようとし、トゥラーンは子どもの頃知り合った優れた石工フッレムッシャーを起用したいと願う。折からトルこの王宮では跡目争いが勃発、モンゴル軍の襲来もおこりフレムッシャーたちの石工の街も壊滅。戦争から街を守りながら、みんなの心の支えとなるモスク建設を進める物語。二人の姉の嫁ぎ先が対立し、争う悲劇、戦争で家族を失う者たち、歴史の流れの中で、まっすぐに生きようとする登場人物たちの姿が、とても気持ちよく読める。厚い本だが、読みやすく、本好きな子に喜ばれそう。