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どんぐり喰い

 

内戦が終わってまもなくのスペイン・アンダルシアが舞台。「どんぐり喰い」というタイトルは、どんぐりしか食べられないような貧しい暮らしをあざけられた呼び名。貧しい村の男の子クロは、学校をやめて仕事についた。ヤギ飼いから始まり、建築現場でやとわれたり、畑を手伝ったり、家の仕事もしたうえで、半端仕事を転々とした。その合間に、巧みに商売で儲けることも考えつく。戦争で散らばった薬莢と皿を交換し、薬莢の銅を街で売るなど機転を効かせて稼ぐ。必死に働いても暮らしは良くならないが、住んでもいない地主は、村人が森で落ちた枝を拾っただけで盗みの罰を与える残酷な存在だ。村の唯一の店は、ツケの記載を増やして巻き上げるが、そこからしか物を買えなければどうにもならない。どん底の貧しさでも、父も母も不正だけは許そうとはしない。頭のいい男の子が、さまざまな不正を見ながらも、誇り高く生きる力を身に着けていくさまが、何とも魅力。著者が夫の少年時代の話をもとに書いたというが、主人公は1943年生れ。あらためて、今と地続きの時代にこんなすさまじい暮らしを強いられていたのかと恐ろしくなるが、同時に、こうした中でも自分の足で立とうとするプライドと、諦めずに希望を持ち続ける姿勢がすごい。