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パン焼き魔法のモーナ、街を救う

 

ハヤカワ文庫だが、原書はローカス賞ヤングアダルト部門等、ヤングアダルト関係の賞を総なめしたというヤングアダルト向き作品。主人公は14歳のパン屋で働く女の子。魔法が一応使えるけど、パン焼き限定で、パンが焦げたり固くならないようにしたり、ジンジャークッキーを躍らせたりなど、ささやかなことばかり。両親は亡くなったがパン屋の叔母の家で楽しく働いて満足している。なのに、ある朝店に入ったとたん目の前に女の子の死体があり、容疑者として逮捕されるという波乱の幕開けをする。女大公が、すぐに無罪だと認めて釈放してくれるが、亡くなった女の子の弟スピンドルが真相を知ろうと近づいてくる。姉は魔法使いだったというのだ。もちろんささやかな魔法しか使えないが・・・。そして街から魔法使いが消える事件が次々に起こる。裏には、全ての魔法使いを消し、街を襲って権力を握ろうとする陰謀があった。生意気だが機転が利くスピンドル。戦場でおかしくなったという何事にも無関心な魔法使い仲間モリー。さらにちょいワルのパン種ボブや傍らで励ましてくれるジンジャーブレッド人形など脇役もいい。絶対アニメ化されそうな内容。楽しく読めるが、同時にかつて戦争にいった叔父が語る戦争の真実など物語に奥行きを与えてくれるエピソードがあるのが、様々な賞の受賞の要因だと感じた。中高生が読んでも、大人が読んでも楽しめる。