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グローバリゼーションの中の江戸 岩波ジュニア新書

 

岩波ジュニア新書の中の”〈知の航海〉シリーズ”の1冊。日本学術会議からの「学術への招待状」として発足したシリーズ。「鎖国」と言われる江戸ではあるが、当時は鎖国という概念がなかったこと。当時の日本が、新大陸発見で南アメリカから銀が流入し、日本がそれまで国際貿易で頼りにしていた国産の銀の価格が崩れ「負け」て、国際競争に敗れる。だが、その「負け」をチャンスとして輸入を停止して自国生産に切り替え、それにより自国に優秀な労働力を育てた、という見方は、発想を180°変えられる興味深い指摘だった。秀吉の朝鮮侵略の後、捕虜を返し、国交を回復した家康。そして、制限しつつも一定の国を選んで交流を続け、だが、国内は基本自給自足と徹底したリサイクル社会を気付いた江戸時代。単純に西洋(植民地主義)の真似をした日本よりも、この時代を高く評価している著者の視点は中高生にも知ってもらいたいものだと感じた。