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父さんが帰らない町で

 

父さんが帰らない町で (児童書)

父さんが帰らない町で (児童書)

 

舞台は1922年のアメリカ。兄のジョーが15歳の誕生日を迎えた日、町にカーニバルがやってきた。だけど、その日ウェイドと兄は町一番の金持ちのケイレブとその手下のサニーとケンカした。父親が帰ってこないことをバカにされたからだ。第一次世界大戦に出かけ、戦争はとうに終わっているのに帰ってこない父。理髪店のガンサーさんは家主で、母さんにプロポーズしてるらしいけど、母さんはまだ返事をしていない。兄さんのジョーは、そんな全てが耐えられないみたいだ。カーニバルの〈恐怖の館〉でウェイドは最後の兵士という人形を見る。胸に穴が開いたその姿を見て、自分の父の運命かもしれないと思うと恐怖でいっぱいになった。そして夜、その兵士が兄さんのところに来た。兄さんは夢だというけど、兄さんのようすがおかしい。そう、兄はカーニバルに雇ってもらって町から出ようとしていたのだ! 小さな町の閉塞感と、父が行方不明になっている不安。母への思いと兄が取り付かれているいらだち。一番弱い立場から見るウェイドの視点が切ない。今もなお、最後の兵士がいない(戦争があちこちで起こっている)現在、こうした辛い思いをする子が増えないようにと願う。