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ガラスのうさぎ

 

ガラスのうさぎ (フォア文庫)

ガラスのうさぎ (フォア文庫)

  • 作者:高木 敏子
  • 発売日: 2005/06/01
  • メディア: 単行本
 

 著者の壮絶な戦争体験の物語。1945年3月10日東京大空襲で母と2人の妹を亡くし、8月5日疎開先の神奈川県二宮町の空襲で父を亡くす。兄たちは従軍していたため、たった1人で父の火葬と葬儀の手続きをしたときは、まだ12歳。戦後身を寄せた仙台の親戚の家では働かされ詰めの辛い生活。終戦の翌年2月、逃げるように東京両国に戻ってようやく兄と水入らずの暮らしを取り戻す。最後は、1947年5月3日に施行された日本国憲法第9条の文面が希望をもって示され結ばれる。
小学生の時に読んだフォア文庫(1979年初版)を読みなおしました。兄のおさがりのランニングシャツに花模様を刺しゅうしたのを、小学校の担任にとがめられ泣きながら切り取る場面は、確か映画で見た時の強い印象がよみがえった。タイトルにあるガラスのうさぎは父の作品で、東京大空襲の自宅跡でぐにゃぐにゃに溶けて見つかったが、それ以外の場面で特に出てくることはない。   (は)