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トンネルの向こうに

 

トンネルの向こうに (児童単行本)

トンネルの向こうに (児童単行本)

 

 バーニーは空襲で焼け出され、母親と一緒に汽車で叔母の家に向かっていた。その車室に一人の男性が入ってきたまもなく後で、汽車は戦闘機に狙われる。トンネルに滑り込んで、戦闘機が去るのを待つことになったが車内は真っ暗だ。おびえるバーニーのために、居合わせた男は、マッチで灯をつけ、物語をしてくれた。それは第一次世界大戦でとても勇敢だったという親友ビリーの物語。戦争を終わらせるために誰よりも勇敢に戦ったビリー。だが最後の戦闘では、無抵抗なドイツ兵をそのまま逃がしてやった。だがビリーはその後、その男をニュース映画のスクリーンの中で発見してショックを受ける。実在のヘンリー・タンディという二等兵をモデルとして描かれた作品。戦争の残酷さと、慈悲が正しかったのか?という問いが、読者の心を動かす。物語の最後はこうだろうな、と想像はついたが、バーニーにとっては、そして読者にとってもリアルな体験であったといえるだろう。