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満月をまって

 

ぼくの父さんはかごを作るのが仕事。山の木を薄くはいで丁寧に編み上げるかごは、とても丈夫だ。ぼくが9才になって最初の満月の日、父さんはやっと一緒に町へ行くことを認めてくれた。棒に結わえたかごを肩にかついで山を下り、長く歩いて町へ。商店にかごを納めてから、母さんに頼まれた買い物をした帰り道。知らない男の人たちが突然「山ん中のくされっかご!山ザル!」と大声でどなってきた。家に戻ったぼくは、二度と町へ行くもんか、父さんにも行かないでもらいたい、と思った。納屋へ行って高く積み上げられたかごをけ飛ばした。すると、父さんの仲間のおじさんが来て言った。風は、だれを信用できるかちゃんと見ている、と。ぼくは、山へ行って耳をすました。そして、風に選ばれる人になろうと心に決めた。

100年以上も前。アメリカのニューヨーク州コロンビア郡の山間でかご作りを生業としていた人々の物語。今はもう作れる人はいないのだそうです。 (は)