児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ゆきのなかのりんご

 

 

ゆきの なかの りんご

ゆきの なかの りんご

 

 復刊ドットコムなのでみてみた。雪の中でりんごを見つけて食べたいと思ったうさぎ、ねずみやきつねに助けてもらうがりんごまで届かない。最後に、やっとくまさんに乗って、ぎりぎり手が届き、みんなでリンゴを食べて、くまさんのほらあなで眠る。きつねはうさぎを食べるのでは? と心配になり、きつねやうさぎは冬眠するか? と疑問に思う。ファンタジーだからいいのかも、と思いつつも、なんとなく思いつき風。絵は悪くないが、ストーリーが弱いと思う。

狼とくらした少女ジェリー

 

狼とくらした少女ジュリー

狼とくらした少女ジュリー

 

 父と引き離され、おばとの暮らしをのがれたいために13歳で結婚することを選んだマヤック。とはいえ、養女にきたようなもので落ち着いて暮らしていたが、“夫”にレイプされそうになって家をとびだした。果てしないツンドラの中で道に迷った彼女は、生き延びるために狼の群れの一員に受け入れてもらうことを決心する。狼の生態を熟知していることを活用し、狼の言葉を学び、ついに群れのリーダーアマレクに迎え入れてもらう。だが、アマレクは狩猟を楽しむ人間に殺されてしまった。絶望の中で、父との再会を果たすが、喜びもつかの間、アマレクを殺した狩人のガイドが父だったことを知る。もはやエスキモーとして生きる世界が閉ざされていることを知るラストは絶望。

ゆきのあかちゃん

宮田ともみ作 アリス館

 

 

 ゆきのあかちゃんが、雲のお母さんから生まれて、小鳥たちと出会い、地上の女の子のところに行って、溶けてしまうが、なんどでも雪になると気づく、という『しずくのぼうけん』のヴァリエーション。絵はイメージ的だが、どういう雪を考えているのだろう? 鳥も、これは何の鳥? という感じで、読後に印象が残らない。

 

ひまなこなべ

 

 アイヌの昔話。熊の神が人間の世界に降りたとき、人間の家で宴会でもてなされている折、踊りが上手な神がいるのを見つけた。だが、なんの神かわからない。そこで熊は、何度も人間の世界に行ってその家の者に打たれる。そしてついに小さな鍋(こなべ)の神であることに気付く。その家の家族は、心がけがよく、小鍋を大切にしてくれた。大勢の宴会の時に、小鍋は不要で暇なので、人間の姿になってみんなに紛れて立派に踊っていたのだ。小鍋を大切にした家族の心がけが、熊をもたらしたというラストはほほえましい。

モロー博士の島

 

モロー博士の島 (偕成社文庫)

モロー博士の島 (偕成社文庫)

 

 動物を人間に改造しようとしたマッド・サイエンティストのモロー博士。この発想だけでも秀逸だが、今なら遺伝子改造としてさらにリアルに展開できそう。そして、こうした技術的な発想を越えてすごいのは「おきて」を唱える動物たちの姿。これって、もしかして・・・・と思うと、ウェルズの凄みを感じる。

みんなのチャンス ぼくと路上の4億人の子どもたち

 

みんなのチャンス (少年写真絵本)

みんなのチャンス (少年写真絵本)

 

 インド、フィリピン、バングラデシュエチオピアルワンダなど世界のさまざまな地域で路上で暮らしている子どもたちの様子を写真で紹介している。写真がどの国のものかのキャプションが小さ目だが、これはもう少し大きい方がよいと思う。単に悲惨、ではなく、そこで友達といっしょに明るく笑う様子も紹介する視点があるのはうれしい。日本の子どもたちに、家があり、学校に行ける自分の状態を活かして可能性を拓いてほしいと呼び掛けているが、先進国の子どもの闇は、また、ちょっと違う視点かも。

 

 

 ネコの住むまち

 

ネコの住むまち

ネコの住むまち

 

「ネコ横丁」が改題再出版。マンションに引っ越してきたばかりのラウラとラッセ姉弟には、まだ友達がいない。窓から外を見降ろして見つけたネコを追いかけ、二人は不思議なまちに迷い込む。そこには自動服着せ機がある不思議な古道具屋、壁や天井に吸い付いて歩ける靴の靴屋など、不思議なお店が軒を連ね、大海原や大草原が出現しする。ネコとファンタジーは、相性がいい。そしてオルセンの絵がたまらなく魅力的!