児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

のら犬ホットドッグ大かつやく

 

のら犬ホットドッグ大かつやく

のら犬ホットドッグ大かつやく

 

 

毎日小学校からの帰り道にシッセは犬に出会います。胴体が長くて首輪はありません。シッセはチーズサンドイッチのお弁当の残りをいつも犬にあげます。ある日友だちのローベルトも一緒に来て「ホットドッグみたいな犬」といったのが犬の名前になりました。うっかりお弁当を残すのを忘れた日、ホットドッグは家までついてきてしまいます。両親は仕事でいつも忙しく、お母さんは家を汚されるのが嫌いで、お父さんは趣味の花壇を大事にしているので、犬を飼うなんて大反対ですが、シッセが懸命に頼んだので、飼い主が見つかるまでという条件で、やっと置いてもらえることになりました。このホットドックのふるまいが、いかにも犬らしく、お父さんお母さんに叱られないようにさせたいと思うシッセの思いが全然通じないようすがなんとも魅力。子どもたちは、ドキドキしながらシッセを見守るのではないでしょうか? ホットドッグが偶然スーパーの泥棒を見つけるという大手柄をたてて、これでうまくいく、と思ったところでまたまたトラブルが! さいごまでシッセと一緒にハラハラしながら楽しんで読めます。

写真物語 ぼくの観察日記

 

ぼくの観察日記―写真物語

ぼくの観察日記―写真物語

 

 両親が外国に仕事に行くために森の中のおじいちゃんにあずけられた8歳のカッレ。虫メガネを見つけて、身近な自然を観察しながらおじいちゃんと楽しい毎日をおくるカッレの様子を描いた写真絵本。これはどういうふうに取材したんだろう? とちょっと驚くような自然な展開。カッレと一緒に自然の不思議を楽しむバカンスを楽しむ経験をした気分になれる。

たまごを持つように

 

たまごを持つように

たまごを持つように

 

 中学に入り、早弥は弓道部に入ったが、一向に上達しないのに落ち込んでいた。そんな早弥にとって同学年の実良は理解不能。いきなり抜群の弓にセンスを発揮して早弥を落ち込ませたのに、徹底したマイペースで同級生からも浮いている。もう一人の一年生の春は、アメリカ人で黒人の父を持つハーフで勇壮な弓をひくイケメンだ。部長の由佳はおっとりと落ち着いていて、県下でもトップクラスの実力の持ち主。一人だけ上達しない早弥は、たまごを持つように弓を持てという教えを理解しようと、必死になってついに実際うずらの卵を持つ訓練を始めた。そんな折、実良は急に調子を崩し的に当たらなくなってしまう。3人で行う団体戦に選ばれ早良はあせるが、そこでは新たなライバルたちとの出会いもまっていた。弓道というちょっと特殊な部活を舞台とし、途中の試合シーンなどで盛り上げて楽しく読ませてくれる。だが、どうもお話を作っている(技術があって組み立てている)感じを私は受けた。まはらさんの作品には何となくそんな感じがあって、私は最後の一歩がのめりこめない。あと、春が新聞社に取材されるのだが、外国人のハーフということでもてはやされる感じ、春自身もいやじゃないのかな?とちょっと気になった。見かけの違いで嫌な思いをしてきたのをはねかえしたのと、見かけの違いで持ち上げられるのってちょっと表裏一体の気もする。春くんに不満がないならOKですが。

カテリネッラとおにのフライパン イタリアのおいしい話

  

カテリネッラとおにのフライパン: イタリアのおいしい話 (こぐまのどんどんぶんこ)

カテリネッラとおにのフライパン: イタリアのおいしい話 (こぐまのどんどんぶんこ)

 

 食いしん坊で、おにとの約束を破ってドーナツを食べてしまう「カテリネッラとおにのフライパン」。子どもがいないパン屋がパンで作った美しい人形に王子様が恋してしまう「パンでできたお人形」。十二人もの子どもを抱えて食べ物がもらえるなら悪魔に魂をくれてやってもいい、とつい言ってしまったためにたっぷりの食べ物と引き換えに危機に陥る「バビロンの通りはいくつある?」。王さまにささげるいちじくのことを正直に言って幸運をつかむ「まじょがくれたバイオリン」の4編が収録されている。いずれも昔話らしいしっかりした楽しいおはなし。読んであげれば5歳くらいから十分たのしめるだろう。

わたしは倒れて血を流す

 

わたしは倒れて血を流す (STAMP BOOKS)

わたしは倒れて血を流す (STAMP BOOKS)

 

美術の時間、電動のこぎりの操作ミスで左手の親指の指先を切り落としてしまったマヤ。血は吹き出るし、動画を撮影する子はいるし、先生から自傷行為の疑いはかけられるし、なんだかグチャグチャな気分。おまけにその事故を連絡しても母親のリアクションがない。離婚して離れて暮らしている母親は、なんとなく普通の人とは違う。きっちりしていていつもよそよそしい。一緒に暮らしている父さんのパスワードを解読して、勝手にフェイスブックやメッセージをのぞいてる。美術高校の一年生だけど成績も大したことないし、反応がない母さんが気になる。そして母さんの家に行く週末。家には誰もいなかった。携帯は置きっぱなし、事件に巻き込まれたの? 成り行きで隣の家のパーティーに入り込み、男の子との出会いが! わかりやすく突っ張る裏で、母親にかまって欲しいマヤのうずまく気持ちがちょっと切ない。失踪した母親の謎と、新しい彼氏との恋の行方でヤキモキさせるが、親友のエンゾや美術と国語の先生のエール、そしてマヤを大切にしている父親の思いが彼女をしっかり支えているのを感じる。でも真っただ中にいるときに、この本読んだら、ちょっと痛いかも!  

おばあちゃんにおみやげを アフリカの数のお話

 

おばあちゃんにおみやげを―アフリカの数のお話

おばあちゃんにおみやげを―アフリカの数のお話

 

 エメカという男の子がおばあちゃんの家に遊びに行く、という写真絵本。行く途中で出会う友だちや市場のいろいろなものなどが1,2,3と徐々に増えていき数の本になっている。アフリカが舞台というのは類書がなく写真の解説もついているが、おはなしというよりアフリカの暮らしを伝える知識絵本的な性格。エメカの写真は最初の一枚のみなので、最後におばあちゃんと一緒の写真が欲しい気がした。

わたしたちは手で話します

 

わたしたち手で話します (あかね・新えほんシリーズ)

わたしたち手で話します (あかね・新えほんシリーズ)

  • 作者: フランツ=ヨーゼフファイニク,フェレーナバルハウス,Franz‐Joseph Huainigg,Verena Ballhaus,ささきたづこ
  • 出版社/メーカー: あかね書房
  • 発売日: 2006/01/01
  • メディア: 大型本
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 リーサは耳が聞こえません。だから手で話すのですが、みんなはリーサの言葉がわかりません。ところがある日、トーマスという男の子が手で話しかけてくれました。トーマスの両親は耳が聞こえないので、いつも両親と手で話しているのです。二人が手で話していると、みんなは秘密の言葉みたいだと興味しんしん。みんなはトーマスの家に行って、耳が聞こえなくても困らないようにブザーが押されると光るなどいろいろな装置があるのをみせてもらいます。何も知らなかった子どもたちが、徐々に手話に関心を持つようになり、ごく自然に耳が聞こえない世界への理解を深めていく様子がとても魅力的。やや長いが、よみきかせで使っても良いかもしれない。