児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

かわいい子ランキング

 

学校のみんなに誰かが送ってきた「かわいい子ランキング」。自他ともに認めるかわいいソフィーが2位なに、地味なイヴが1位。こんなことをしたのは誰? プライドが傷ついたソフィー。注目がいやでたまらないイヴ、そしていつもイブの味方の親友ネッサ。犯人は学校一の人気者ブロディ? 彼は、カッコ良くて大金持ち。ブロディは、さっそくイヴに近づいてきた。真犯人を探そうとソフィー、イヴ、ネッサは結束する。実はソフィーの家は、母子家庭で家計が苦しいが、そんな秘密は誰にも明かせない。メイクも勉強もスポーツも常に努力で1位を勝ち取ってきた。プロディに近づいてシッポをつかめるように、ソフィーは、イヴを美しくコーディネイトしてくれる。メイクと服で一気にステキになったのも、かっこいいプロディに優しくされるのも、うれしくないとはいえないイヴ。ネッサは未来の大女優を目指していて、実力もバッチリだけど、サイズが大きいと周りからばかにされているのがくやしい。見かけってなに? カワイイってどういうこと? そして許しがたい発言をするプロディだけど、実は演劇の主役だというのに、家からは誰も見に来てくれないという辛さをかかえている。中学校の先生たちは一所懸命、とりわけ校長先生はイヴに手を差し伸べようとしてくれるけど、解決が簡単じゃないってことはイヴ自身が一番よくわかっている。さまざまな順位をつけられた女の子たちの内面や秘密、意外な犯人、最後までドキドキしながら読める。迷い、間違えることもある中学生たち。つぶれないで進んで欲しい! 

じゅうにしものがたり

 

ねずみが、十二支のうしろから順に動物たちの背中をわたってゆき、神さまの前に1番に降り立つという趣向。神さまの前に集まるのは1月の2日と聞いたねこは、眠り猫のようにうっとりと眠ったままの姿で終わります。
装飾的で華やかな絵に、躍動するねずみの姿がユーモラスです。 (は)

絵本きりなしばなし

 

4話を収める。人間を食おうと大口を開けて待ち受けていたおおかみの腹を通り、速足の飛脚があっというまに駆け抜けていく「おおかみとひきゃく」。山へ柴刈りに行ったじじが二十歳の若者になって帰ってきて、若返りの滝の水を飲みに出かけたばばの方は、赤ん坊になってしまう「じじとばば」、兵衛の司が毎晩みる化け物の正体はアリとダニだったという「秋の夜」、山へ行ったじいさまの前にへびがペロッ、じいさまは鎌でチョッキリ、ペロッ、チョッキリ・・・。やがて風がぼふあ、とちのみがごろごろ、からすががあ・・・という「きりなしばなし」。

挿し絵は、素朴な黒い版画絵に朱、黄、緑の差し色が美しい。
作者の梶山俊夫さんは、これらの話を「正月もま近い夕方、おばの背中」で、「風のように」聞いたかもしれないそうです。 (は)

らいおんはしった

 

らいおんは、みんなと話がしたかった。きれいな花や夕焼けのこと、おいしい水のあるところのこと。でも、近づくとみんな逃げ出す。何年もひとりきりだった。

ある日、1頭のしまうまが、こちらに近づいてきた。また逃げられないかと、どぎまぎしながら挨拶すると、しまうまも「やあ、こんにちは」と返してくれた。らいおんはこらえきれずに、今まで心にためてきたことを全部はなした。そして、ふたりはずっと友だちになった。

らいおんの寂しい独白ですすんでいき、中谷千代子さんの絵が感傷を増す絵本だと、思っていました。このらいおんは、「たべてやるんだ」と言いながら、その迫力、怖さが少しもありません。私の1つ下の妹は、この絵本が「子どもの頃好きだった」と言うので、どんなところが?と聞くと。らいおんを前に全く動じないしまうまのたたずまい、美しさに「すごい!!」と思った、感動した!!、と即答。自然界ではありえないとわかっていたんだけどね、と。

こういう子どもの読み取り、絵のもつ力にはっとして、「人気作家のかくれた名作10選」とされたのも納得でした。 (は)

てつがくのライオン―工藤直子少年詩集

 

「のはらうた」シリーズで、生き物たちの思いを代弁して楽しませる工藤直子さん。

本詩集でも、ねこやくま、ごまめや、そらまめ、ピーマンなどの心を描く「いきものたち」、人間の悲しみや寂しさ、痛み、たいくつ、ウキウキを描く「たくさんの心」などに章立て、空、雲、海、太陽、地球にも思いをはせています。

佐野洋子の挿し絵は、それらの哀愁と、強い自我の両方を表現して見せています。「出合いのものがたり」の章は散文詩で、長新太の絵で『てつがくのライオン』(復刊ドットコム)、また、「夕陽のなかを走るライオン」は中谷千代子の絵で『らいおんはしった』(福音館書店)という絵本になっています。

最後「遠眼鏡でのぞいてごらん」の詩は、「真っ白な来年に/さて なにを描こうか」と結ばれます。来る年が「まっ白」に思えたら希望があるなあと思います。 (は)

くるみわりにんぎょう

 

今日はクリスマス、マリーとフリッツのきょうだいはプレゼントの数々に大喜び。マリーはそのうちのくるみわり人形に興味をもちましたが、フリッツが乱暴に扱ったせいで壊れてしまいます。

マリーが包帯を巻いてやり、戸棚へしまったその時、12時の時計が鳴ったと思うと、頭が7つあるねずみの王さまとけらいたちが、マリーに飛びかかってきました。くるみわり人形を大将に、兵隊人形たちが応戦するも、手ごわいねずみたち。くるみわりはまたたく間に、ねずみの大群に取り囲まれてしまいます。マリーは無我夢中で、自分のくつをねずみに向かって投げつけました。

マリーのおかげで助かったくるみわり人形。マリーを自分の国へと案内します。宝石のようにかがやく氷ざとうのまきばや金銀のくだものがなる森、ばらの湖。くるみわりは、お菓子の国の王子だったのです。

ふと気がつくと、マリーはベッドの中。美しく長い夢から覚めたところでした。

ホフマン作『クルミわりとネズミの王さま』の一部を、幼い子向けに絵本化。堀内誠一による挿し絵が、明るい色調でおしゃれです。 (は)

クリスマスのあかりーチェコのイブのできごとー

 

クリスマスイブ。1年生になったばかりのフランタは、ベツレヘムのあかりをもらうため、初めてひとりで教会へ行くことに。ろうそくを入れた手さげランプ、貯めておいたおこづかいを持って出かけます。

あかりはすぐにランプに移せましたが、教会の募金箱にお金をつまらせてしまったフランタは、どうしたらいいかわからずその場を逃げ出します。

あわてて帰る途中、近所のドブレイシカおじいさんに会いました。ドブレイシカさんは、奥さんのお墓に供える3本のカーネーションを盗まれてすっかり気を落としていました。フランタは、ポケットのお金で花を買ってあげようと思いたち花屋へ。でも、お金が足りません。そうだ、さっき募金箱につまらせてしまったお金!かけ戻ってお金を引っぱり出そうとしていると、教会の管理人さんが来てフランタをつかまえてしまいました。
小さなフランタに次々と起こる出来事。その度にそれぞれの場の大人が、フランタを一人前に扱って辛抱づよく話を聞き、考えをうながし、思いを受け止めます。小さな冒険をやりとげたフランタのもとには、その夜、小さなイエスさまからのプレゼントが届きます。

クリスマスにまつわる物語ですが、小さい子どもの好奇心や、失敗と緊張、思いやり、1人でやりとげたいという気持ち・・・は誰しも覚えのあるものとして、読者の子どもを引きつけることでしょう。

エス誕生の際の3人の王様の名前や贈り物、もつやくとは何かまで、しっかり説明してあるところも貴重です。 (は)