児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

このままじゃ学校にいけません

 

このままじゃ学校にいけません

このままじゃ学校にいけません

 

 エディは嫌なことがあると、大好きな動物になった自分を想像します。学校へ子ブタちゃんになったつもりで行ったり、授業で答えがわからないと「手がホッキョクグマになったので書けません」と言ってみたり。今日は、地球上で1番足が速くて気の強いチーターになったつもりでいじめっこに飛びかかってみました。そしたら、校長先生の部屋に連れていかれたので、今度はカメレオンになってだんまりです。その夜エディは鏡を見ながら、自分以外の別のものには決してなれないことに悲しくなって、ベッドで泣いてしまいました。するとママがやさしく涙をぬぐって、悲しいときに涙を流すのは地球上で人間だけなんだってと教えてくれました。エディはそれなら空も同じだと考えます。雲にたまった涙が空からこぼれて木や花、動物たちが育つこと、涙を流した後はふわふわな雲に戻ってお日さまも出ること。そう考えたらエディも少しふわふわ気分になりました。そしてあくる朝、自分のままで学校に行くのも「けっこういいかもね」と思うことができたのです。
最後の場面、うちを出るエディの目線の先に、スクールバスの窓からにっこり手を振る子が1人います。ページを戻ってみると、その子は実はエディのことを気にかけながらも声をかけられないでいたようだと気づきます。心の繊細な子にとって、学校という集団生活はつらいことが多いかもしれません。エディの頭には2枚の葉っぱが動物の耳のように描かれていて、気分の変わった最後でもそれは消えないのですが、自分だけの空想の世界を持ちながら現実の自分や社会も意外といいかもねと思えると、少しは楽になれるでしょう。
ち密でしゃれた印象の鉛筆画に、水彩の淡い色がやわらかです。 (は)