児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

with you ウィズ・ユー(2021年課題図書 中学生)

 

with you (くもんの児童文学)

with you (くもんの児童文学)

 

 悠人は中学3年生。受験を前に部活を引退したが夜のランニングを続けている。兄の直人は優等生でトップクラスの高校に進学。悠人は、兄より下の高校を志望。兄は努力が足りないと怒るが、母は黙認だ。父が家を出てからあまり気力がない。兄に比べて放置されている気分がぬぐえない悠人は、ランニングで気分を発散している。ところが、夜の公園で暗い雰囲気でブランコに乗っている少女を見かける。2度目に見かけた時、つい気になって声をかけるが、隣の中学で一つ年下の朱音だった。なぜあんなに暗い様子なのか? 少しづつ距離が縮まる中で、実は朱音の母は病気で、家事のほとんどや小さい妹の面倒を見なければならず、疲れ切っていることがわかってくる。福祉の仕事をする母から、そういう子はヤングケアラーと言うのだと教えてもらった悠人。少しでも朱音に寄り添いたいと思うが、朱音は他の子と違いすぎる現状の中で、つきあいたいと言ってきた悠人を拒絶する。当初、兄に比べられて激しい不満を抱えていた悠人が、実は兄は兄で悩んでいることや気を使っていることがあること、気楽な性格だと思っていた友人にも祖母の介護にかかわったヤングケアラー体験があったことなどを知って少しづつ変わっていく。中学生の初恋、今話題のヤングケアラー問題などを描いて読みやすいし、感想文を書くとっかかりが多いので、書きやすそう。ただ、朱音の悩みの本当に辛い日常の介護描写がないので、ヤングケアラーの日常が雰囲気しかわからないのが残念。