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バオバブのきのうえでーアフリカ・マリの昔話

 

昔、ジョレの村に、災いをもたらす不吉な子だとして、森に捨てられた男の子がいた。男の子は森の動物たちに育てられるが、ある日、自分の出自を知ると、バオバブの木にのぼり、歌を歌うようになった。「ジョレの畑に雨ふるな」と村を恨みながら。

食べ物に困るようになった村人たち。ある日、森へ入った狩人が男の子を見かけ、王さまに伝える。村人たちはバオバブの木の下から、男の子に呼びかけてみるも、下りてこない。同じくらいの子どもに行かせてはと上らせてみると、男の子はようやく木から下り、そのとたん、ジョレの村に雨が降り出した。

そのときから、ジョレの村では子どもを捨てることはしなくなり、そして王が亡くなると、その男の子が次の王になった。新しい王は、森で教わった深い知恵で国を治めたのだった。

アフリカ・マリの伝統的な語り部「ジェリ」による昔話を再話。力強いタッチのペン画に、アフリカの大地を思わせる茶色をところどころ配した挿絵。 (は)