児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

カナリア王子

 

カルヴィーノが収集、再話した200編の民話の中から「恐ろしくも美しい」7編を厳選した。どれも昔話らしい奇想天外な展開が次々と続くが”こわく”はないので安心して読んでほしい。

表題作は、美しい王女が継母に妬まれ森の城へ閉じ込められる。魔法使いにもらった本を前からめくると王子がカナリアとなって飛んでくる。継母は王子に不治の傷を負わせ2人の仲を裂こうとするが、王女の勇気と知恵で傷は治り2人は結ばれる。

ほかに、貧しい石工が拾ったカニが金の卵をうみ、しかも2人の息子のうち甲らを食べた兄が王さまになり、足を食べた弟のまくら元には毎朝おかねがどっさり出るという「金のたまごをうむカニ」。太陽との間に生まれたむすめが2度までも宮殿を追いやられるが、その不思議な力で王子との結婚を果たす「太陽のむすめ」。不漁に悩む猟師が海の悪魔と取引をし、大漁と引替えに息子を渡す約束をするが、息子は運よくタカの妖精に助けられ紆余曲折の末結ばれる話「リオンブルーノ」。願いがなんでも叶う指輪や風より速く走る長ぐつ、姿を消せるマント、王女との結婚をかけた試合、妖精との約束を破ってしまういいなずけ、旅の途中泊めてもらう家には人間を食べる風が住んでいるなどなど、昔話要素がてんこ盛り。「とりごやの中の王子さま」「ナシといっしょに売られた子」「サルの宮殿」は『みどりの小鳥』(岩波少年文庫)にも所収。(は) 

ベネベントの魔物たち 4 わがままな幽霊

 

 シリーズ最終巻は、2巻目の主人公プリモのもう1人のいとこ、セルジオの物語。

セルジオは、屋根裏に住む祖先のゴースト、ビスビスのわがままに悩まされていた。ささげものの食料に対する注文がとにかくうるさい。おまけに、7人の息子を世話するお母さんからは、弟たちの大量のおむつの洗濯やら面倒な用事ばかり言いつけられる。あげくの果てに部屋が狭いからと、ビスビスと一緒に屋根裏で寝てくれと追い出されてしまう。お母さんを喜ばせれば家族の部屋に戻れるのではと考えるセルジオ。お母さんがずっと会えないでいるいとこ、カロッツォ家との仲たがいの原因がお互いの家のゴーストにあることをビスビスから聞き出し、いさかいの元となった置物の木の船を手に入れることに成功。お母さんの願いを叶えることができたセルジオは無事に家族の部屋にもどった。

最終巻でも、人間たちにまぎれている魔物ジャナーラがいったい誰なのかや、3巻目に取り残されたイシドラへの疑問は明示されず。もやもやが残ります。   (は)

ベネベントの魔物たち 3 魔女の足音にご用心

 

3巻目は、第2巻目までの出来事をプリモのいとこ、マリアの目から見た物語。

おっとりしたマリアは魔物の存在を人一倍恐れているが、2人で暮らす父親は迷信だと取り合わない。ある日プリモから金の指輪を預かり、お父さんに調べてもらってほしいと頼まれる。指輪を見つめるうち、その不思議な力を知りたくなってしまったマリア。指輪をはめて、子どもをつかまえる魔女クロッパーのいる古代劇場広場へ向かう。そして、クロッパーに出会ったマリア。なんと魔女の家に招待されお茶をごちそうになる。そして友だちのフクロウとネズミ、コウモリを紹介され、楽しいひと時を過ごしたのだ。でも無事に家へ戻ったマリアは、ほかの子どもたちにクロッパーがどんなに恐ろしかったかという大きなうそをつく。クロッパーを自分だけの友だちにしておきたかったから。でもプリモの姉イシドラは、クロッパーがやさしいことを知っているみたい。なぜ?そのヒントは、第4巻目のお話で。  (は)

ベネベントの魔物たち 2 緑の手の指輪

 

シリーズ2巻目は、ふたごのローザとエミリオのいとこ、プリモが中心の物語。

度胸が自慢のプリモは、ある日川で釣った魚のお腹から金の指輪を見つける。魔物たちの住むベネベントで最も恐ろしい魔女マナロンガの指輪だ!と思いこんだプリモ。魔法の力を確かめるため、いたずら魔物ジャナーラを捕まえる計画を思いつく。指輪を首から下げ魔物の木で一晩中待ちかまえるも、ジャナーラは現れず。次なる計画、町でただ1人本を読むことのできるいとこのマリアのお父さんに調べてもらおうと、指輪をマリアに預けたところ、マリアが行方不明に。しばらくして無事帰ったマリアは、恐ろしい魔女のクロッパーにつかまったが指輪の力で逃げ出してきたと話す。

プリモは、今度こそ自分の力で指輪の力を確かめようと、マナロンガが現れる橋へ向かう。しかし、あわやマナロンガに連れていかれそうになったところを姉のイシドラに助けられる。それを見ていたマリアは、プリモに何かうちあけたい様子を見せるが。マリアの冒険の本当の話は、第3巻目で。  (は)

ベネベントの魔物たち 1 いたずらの季節

 

イタリア・ナポリの北東に位置する町ベネベントには、魔物と言われる存在―魔女、精霊、妖精、ゴースト、デーモン―などなどがたくさんいる。人間の姿をして人々にまぎれこんでいるジャナーラもその1つ。春はジャナーラのいたずらの季節。ふたごのローザとエミリオはそんな町に暮らしていた。

思慮深いエミリオは魔物払いのおまじないを欠かさない。一方食いしん坊でいい加減なローザは、このところ、キリキリとしたお腹の痛みと鼻のむずがゆさに悩まされていたが、これまで父さんに叱られる度にジャナーラのせいにしていたため信じてもらえない。エミリオと2人で占い師のピアばあさんを頼るが成果はなく。しかしエミリオが、ピアばあさんの階下に住む義足のアメリゴじいさんから教わったオレガノの小枝を使い、ようやくジャナーラのいたずらをやめさせることができた。

このことがあってアメリゴじいさんこそジャナーラなのでは?と疑い始めるエミリオ。そして友だちのプリモのお母さんがジャナーラだといううわさもある。多くの謎を残して「ものがたりはつづくよ!」と誘う結び。町の地図や豊富な挿絵、さらに続巻と同じふちどりのページを並べると大きな場面になるなど、物語以外に子どもの興味を引く仕掛けがいろいろと。  (は)

ドロミテの王子―イタリアに古くから伝わる民話より

 

今夜は十五夜。月にまつわる物語です。
トミー・デ・パオラ自身と思われるおはなしおじさんが子どもたちに語って聞かせます。北イタリアにあるドロミテの山々が美しく輝くようになったいわれの物語。
月の王国に住む姫君に恋をしてしまった王子。野山を守るサルヴァーニという小人の進言によって念願かない、月の王国へ行きます。しかし、月の明るさに目を傷めてしまった王子は地上へ戻らなくてはなりません。姫を連れていきますが、地上での生活に今度は姫の具合がしだいに悪くなり。再びサルヴァーニの小人たちの働きで、月の光で織り上げた網をドロミテの山にかぶせたところ、光り輝く月の王国の世界が山々に広がり、姫は元気を取り戻すのです。
とてもロマンチックな物語。長編ですが、絵の雰囲気も素晴らしいので高学年くらいに読んであげられたら素敵です。  (P) 

情報社会に生きるきみたち ヒトがキーをたたく

 

 1993年出版と古い本だが、意外に現在でも通用する。ということは、基本的な考え方はすでに確立されていてもそのとおりにできないから、子どもたちは(大人も)悩んでいるのかもと考えさせられた。ここでは、スーパーマリオの映像づくりを手掛かりに、コンピュータの仕事(やっていること)を分解していくと、それが単純なものの組み合わせによってできていることを解説する。「情報」というのは、人間がそれを「情報」として活用することが前提になっていること、そして「情報」を正しく扱う(利用する)方法、具体的には個人のプライバシーを守ることや情報に適正な価格をつけることでバランスをとることを説明。人間が間違うことを前提とした仕組み「フェイル・セーフ」など、人間がよりよくコンピュータを利用する方法をさぐっている。